Case Practice

飲料メーカーの東南アジア進出、国と参入形態をどう選ぶか

  • 新規事業・市場参入
  • 難易度:応用
  • 目安 30分
設問

無糖茶と炭酸飲料を主力とする国内の飲料メーカーがあります。年商は1,500億円で、海外売上はほぼありません。
経営陣は東南アジアへの進出を検討しており、候補として次の3か国が挙がっています。
A国:人口1億人、市場の成長率は高いが、輸入関税が高く日系の小売が少ない。
B国:人口3,000万人、所得水準は高めで日本食が普及し、輸入関税は低い。
C国:人口7,000万人、飲料の流通を現地の大手財閥が握っている。
どの国に、どの参入形態(輸出/現地生産/現地企業との提携)で進出すべきか、結論と理由を述べてください。

まず時間を計って、声に出して解いてみてください。行き詰まったらヒントを1つずつ開き、解き終えてから解説を確認します。

ヒント 1 を見る

「国の選択」と「参入形態の選択」は別の判断です。先に国を絞り、その国の条件に合わせて形態を決める二段構えにしましょう。

ヒント 2 を見る

国の選択軸は、市場規模と成長性、自社製品との適合度(無糖茶が受け入れられるか)、参入障壁(関税・流通・規制)の3つが基本です。

ヒント 3 を見る

参入形態は、投資額・1本あたりコスト・立ち上げの速さ・コントロールの強さのトレードオフで比較すると整理できます。

解説を表示する解答の流れ・数値例・評価のポイント・よくあるNG・発展問題

前提の確認

最初に、面接官と次の点をすり合わせます。

  • 進出の目的:国内市場の伸び悩みを補う成長の柱をつくること。5年後に海外売上100億円を目標と置く(仮定)
  • 主力商品:無糖茶を第一の武器とする。甘い飲料が主流の市場では、健康志向の中間層以上が主な顧客になる
  • 投資の許容範囲:初期投資は最大50億円まで、5年で営業黒字を条件とする(仮定)
  • 規制:食品表示や成分に関する現地の要件は、一般に国ごとに異なるとされるため、詳細は現地調査で確認する前提とする

解答の流れ

1. 判断軸の設定

判断を二段階に分けます。

  1. 国の選択:市場規模と成長性、自社製品との適合度、参入障壁の3軸
  2. 参入形態の選択:投資額、1本あたりコスト、立ち上げの速さ、コントロールの強さの4軸

2. 各判断軸の検討

国の選択:A国は規模と成長性で最も魅力的ですが、高関税と流通の弱さから、輸出では価格競争力を持てず、現地生産には大きな投資が要ります。C国は規模がありますが、財閥が流通を握るため、提携なしには棚を確保できず、提携すると主導権を失いやすい構造です。B国は規模で劣るものの、所得水準が高く日本食が普及しており、無糖茶が受け入れられる素地があります。関税が低いため輸出で試せる点も大きな利点です。第一候補はB国とし、A国は将来の拡張先と位置づけます。

B国の市場規模:人口3,000万人のうち都市部の中間層以上を3割の900万人、そのうち無糖茶を習慣的に飲むようになる人を10%の90万人と仮定します。年間30本、メーカー出荷価格を1本100円(仮定)と置くと、到達可能な売上は年27億円です。5年後の目標100億円には届かないため、B国は「足場」であり、A国への拡張を前提とした投資設計が必要と分かります。

参入形態の比較:輸出の場合、製造原価40円に輸送15円と関税10円が加わり、1本あたりの利益は35円です(仮定)。現地生産なら原価は30円に下がり、関税と輸送もかからず、1本あたり70円の利益になりますが、工場に50億円の投資が要ります。1本あたりの差35円で50億円を回収するには年1.4億本が必要で、B国の27億円(2,700万本)の規模では回収できません。

輸出:35円 × 2,700万本 = 年9.5億円の粗利 現地生産:70円 × 2,700万本 = 年18.9億円の粗利 差額 = 年9.4億円 → 工場投資50億円を差額で回収するには 5年以上

したがって、輸出と現地ディストリビューターとの提携で始め、規模が見えた段階で現地の飲料会社への委託生産に切り替えるのが合理的です。

3. リスクと条件

  • 需要のリスク:無糖茶の受容が仮定の10%に届かず、規模が出ない
  • 提携のリスク:ディストリビューターが自社商品を優先せず、棚を確保できない
  • 拡張のリスク:A国への展開時に関税と流通の壁が残り、B国止まりになる

4. 結論

結論はイエスで、B国に輸出と現地ディストリビューターとの提携で参入します。次の条件が満たされない場合は見送ります。

  • ディストリビューターとの契約で、主要な小売チェーンの棚を初年度に確保できること
  • 3年目までに年1,000万本、営業黒字に到達する見通しが立つこと
  • A国への拡張に向けて、委託生産を受けられる現地の飲料会社が候補として存在すること

面接官とのやり取りの例

候補者:「無糖茶が受け入れられるかが国の選択の鍵だと仮定しています。B国で日本食が普及しているとのことですが、日本食の外食店で無糖茶は提供されていますか。」

面接官:「日系の外食チェーンでは提供されており、現地の若い層に定着しつつあります。」

候補者:「では、外食で味を知った層が小売で買う流れを想定できます。B国の市場規模を27億円程度と置いていますが、目標の100億円には届きません。A国への拡張を前提にしてよいでしょうか。」

面接官:「はい。ただしA国の関税は輸出では採算が取れない水準です。」

候補者:「それならA国は現地生産か委託生産が前提になります。B国で実績をつくり、A国の飲料会社に委託生産を依頼する順序が現実的だと考えます。B国のディストリビューターは、日系メーカーの取り扱い実績がある会社が候補になりますか。」

面接官:「候補は2社あります。1社は大手ですが多くのブランドを扱い、もう1社は中堅で日本食材に特化しています。」

候補者:「立ち上げ期は自社商品への注力度を重視し、中堅の特化型を優先する判断になります。」

評価のポイント

観点 見られていること
前提確認 進出の目的と投資の許容範囲を、自分から置けたか
判断軸 国の選択と参入形態の選択を分け、それぞれの軸で比較できたか
数値の扱い 1本あたりの利益差から、現地生産に必要な規模を逆算できたか
結論の出し方 国と形態を明言し、拡張の順序と見送る条件まで示せたか

よくあるNG

  • 人口の多さだけでA国を選び、関税と流通の壁を検討しない
  • 国の選択と参入形態を同時に語り、何を根拠に決めたのか分からなくなる
  • 現地生産のコスト優位だけを見て、投資回収に必要な規模を計算しない
  • 提携先に依存するリスクを無視し、棚の確保を前提として置いてしまう

発展問題

B国での輸出販売が軌道に乗り、年2,000万本に達したとします。A国に進出する際、自社工場の建設と現地飲料会社への委託生産のどちらを選ぶべきか、投資額とコントロールの強さのトレードオフを整理し、条件を添えて結論を述べてください。

※ 本問の数値・企業はすべて説明のための架空の設定です。

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