ケース面接の対策は、解き方を学ぶだけでは仕上がりません。実際に手を動かし、時間を計って解き、振り返るというサイクルを回して初めて、本番で使える形になります。本記事では、独学でも取り組めるオリジナルの練習問題を、5つのタイプ別に2問ずつ、計10問ご紹介します。
※ 本記事の企業・施設・数値は、すべて練習用の架空の設定および仮定です。特定の企業や団体を題材にしたものではありません。
問題を解く前に決めておくこと
問題文をいきなり読み始める前に、練習の進め方を決めておきましょう。ここを整えるだけで、同じ10問から得られるものが大きく変わります。
時間の計り方
本番では、考える時間と話す時間の両方に制約があります。練習でも必ずタイマーを使いましょう。目安として、1問あたり合計20分(前提確認3分、構造化5分、議論・計算10分、まとめ2分)と置いて解くと、時間配分の感覚がつかめます。これはあくまで仮の配分ですので、慣れてきたら15分に短縮する、逆に難しいタイプは30分かけて丁寧に詰めるなど、目的に応じて調整してください。
大切なのは、時間切れになっても途中で止めないことです。「時間内にどこまで行けたか」に印をつけたうえで、続きを最後まで解ききります。この差分が、そのまま次に縮めるべき距離になります。
声に出して考える
ケース面接で評価されるのは、頭の中の思考ではなく、相手に伝わった思考です。紙の上で解くだけだと、この差に気づけません。一人で練習するときも、必ず声に出して説明しながら進めてください。録音して聞き返すと、「沈黙が長い」「結論より先に細部を話している」といった癖が驚くほどはっきり分かります。
面接官役がいない場合は、前提や追加情報を自分で置いて構いません。「本来はここで来店客数の推移を確認しますが、今回は横ばいと仮定して進めます」と宣言してから進めれば、思考の流れは崩れません。
振り返りの方法
解いた直後に、5分だけ振り返りの時間を取ります。おすすめは、次の3点を1行ずつメモに残す形式です。
- 論点の設定は適切だったか(何を解くべき問いだと考えたか)
- 分解の切り口は打ち手につながっていたか
- 結論を一言で言えるか
同じ問題を1週間後にもう一度解き、このメモと比べると、伸びた部分と変わっていない癖が見えてきます。問題数を増やすことより、この往復を持つことのほうが効果的です。
タイプ1:市場規模推定(フェルミ推定)
問1 国内の動物病院における年間の診療市場規模
設問:日本国内の動物病院で行われる診療の年間市場規模(金額ベース)を推定してください。
着眼点
- まず対象範囲を定義します。犬・猫に絞るのか、他の動物も含むのか。トリミングやペットフードの販売を含めるのか
- 需要側からは「飼育頭数 × 年間受診回数 × 1回あたり単価」という形に分解できます
- 飼育頭数は、世帯数に飼育率を掛ける形で置くと根拠を説明しやすくなります
- 受診回数と単価は、ワクチンや健康診断などの定期的な受診と、病気やけがによる受診とで大きく異なる点に注目してみてください
- 最後に、病院数と1院あたりの売上から供給側で概算し、桁が合うか確認します
よくあるつまずき:飼育「世帯数」と飼育「頭数」を混同してしまい、多頭飼いの分だけ数を取りこぼすケースがよく見られます。
問2 ある地方都市の駅前立体駐車場1施設の年間売上
設問:人口約50万人(仮定)の地方都市の駅前にある、収容台数300台(仮定)の立体駐車場1施設の年間売上を推定してください。
着眼点
- 1施設が対象なので、供給側から積み上げるほうが数値を置きやすくなります
- 「収容台数 × 稼働率 × 営業時間 × 時間あたり単価 × 営業日数」が骨格になります
- 稼働率は時間帯・曜日で大きく変わります。平日昼、平日夜、休日といった区分に分けると精度が上がります
- 短時間利用と月極契約では単価の考え方が異なるため、分けて扱うかどうかを最初に決めておきます
よくあるつまずき:稼働率を終日一律で置いてしまい、「深夜も満車」という非現実的な前提のまま計算を進めてしまうことがあります。
タイプ2:売上・利益改善
問3 郊外型家具チェーンの営業利益改善
設問:郊外に大型店舗を展開する家具チェーンがあります。営業利益を3年で1.3倍にするには、どうすればよいでしょうか。
着眼点
- 大型店舗は家賃や人件費といった固定費の比率が高く、売上の増減が利益に大きく響く構造だと考えられます
- 売上は「来店客数 × 購入率 × 客単価」に分解し、さらに店舗別・商品カテゴリ別で比較すると差が見えやすくなります
- 家具は購入頻度が低い商品です。来店から購入までの検討期間が長いことが、どの指標に表れるかを考えてみてください
- コスト側では、大型商品の配送・組立にかかる費用や、在庫の保有期間にも目を向けます
よくあるつまずき:「客単価を上げる」「集客を増やす」で止まってしまい、どの指標がなぜ落ちているのかという特定の作業を飛ばしてしまいがちです。
問4 個別指導塾の売上減少への対応
設問:都市部で個別指導塾を運営する企業があります。売上が2年連続で減少しています。立て直しの方針を示してください。
着眼点
- 会員型のビジネスなので、「生徒数 × 1人あたり月謝 × 在籍月数」という形で捉えると、継続の要素を落とさずに済みます
- 生徒数の減少なのか、在籍期間の短期化なのか、単価の低下なのかを切り分けることが出発点です
- 対象学年ごとに、入会が起きる時期と退会が起きる時期が異なる点は、有力な切り口になります
- 外部要因(対象年齢の人口、競合の増加、オンライン型の台頭)と自社要因を分けて考えます
- 講師の確保状況が受け入れ可能な生徒数の上限になっていないかも確認したい点です
よくあるつまずき:需要側だけを見て、講師の採用や教室のコマ数といった供給側の制約を見落とすことがあります。
タイプ3:新規事業・市場参入
問5 食品メーカーによる高齢者向け宅配事業への参入
設問:冷凍食品を製造する中堅の食品メーカーが、高齢者向けの食事宅配事業への参入を検討しています。参入すべきかどうか、判断の方針を示してください。
着眼点
- 「参入すべきか」を問われたら、判断軸を先に示します。市場の魅力度、自社の勝ち筋、参入リスクの3点が基本形です
- 既存の製造設備やレシピの知見がどこまで使えるのか、逆に何が新しく必要になるのかを切り分けます
- 宅配事業は配送網が成否を分けます。自社で持つのか、既存事業者と組むのかで、必要な投資も損益構造も変わります
- 利用者と支払者が異なる場合がある点にも注目してみてください
- 撤退する場合にどれだけの費用が残るかまで触れられると、判断に厚みが出ます
よくあるつまずき:市場が伸びているという理由だけで参入を結論づけ、自社が勝てる理由の説明が抜けてしまうことがあります。
問6 地方鉄道会社の遊休地活用
設問:地方で路線を運営する鉄道会社が、沿線に保有する複数の遊休地の活用を検討しています。どのような新規事業が考えられ、どう選ぶべきでしょうか。
着眼点
- 目的を最初に確認します。収益の最大化なのか、沿線人口を維持して本業の利用者を確保することなのかで、答えは変わります
- 「土地を貸す」「自社で運営する」「売却する」という選択肢の幅を最初に押さえておくと、発想が偏りません
- 立地の性質(駅からの距離、周辺人口、用途の制限)によって適した用途が変わるため、まず土地を分類します
- 本業との相乗効果、つまり鉄道の利用者増につながるかどうかは、この会社ならではの評価軸になります
よくあるつまずき:アイデアを数多く挙げることに時間を使い、選ぶための基準を示さないまま議論が終わってしまいがちです。
タイプ4:コスト削減・オペレーション改善
問7 中堅物流会社の配送コスト削減
設問:全国に配送網を持つ中堅の物流会社が、配送コストを2年で15%削減したいと考えています。どこから手をつけるべきでしょうか。
着眼点
- コスト削減では、金額の大きい費目から構造を押さえるのが基本です。人件費、燃料費、車両費、外部委託費などに分けて規模感を把握します
- 「1件あたりコスト × 件数」に分けると、単価を下げる打ち手と件数あたりの効率を上げる打ち手を区別できます
- 積載率、再配達率、1日あたり配送件数といった稼働の指標は、改善余地を見つける手がかりになります
- 削減がサービス品質(配送時間や誤配率)を損なわないか、トレードオフを明示します
よくあるつまずき:一律の経費削減や値下げ交渉に話が寄ってしまい、業務の流れそのものを見直す視点が抜けることがあります。
問8 ビジネスホテルの客室清掃の生産性改善
設問:全国にビジネスホテルを展開する企業が、客室清掃の生産性を高めたいと考えています。どのように進めますか。
着眼点
- まず現状を測る指標を決めます。1室あたり清掃時間、1人あたり担当室数、外部委託の比率などが候補になります
- 作業を工程に分解します。移動、リネン交換、水回り、備品補充など、どこに時間がかかっているかを見ます
- 需要の波(曜日・季節による稼働率の変動)に対して、人員配置がどう追随しているかは重要な論点です
- 清掃時間の短縮が客室の品質や従業員の定着に与える影響も、あわせて検討したい点です
よくあるつまずき:清掃スタッフの人数を減らす方向にだけ発想が向かい、工程そのものを減らす・まとめるという選択肢が出てこないことがあります。
タイプ5:公共・非営利
問9 市立図書館の利用者数を増やす
設問:人口減少が進む地方都市の市立図書館について、年間の利用者数を3年で1.5倍にする方針を示してください。
着眼点
- 「利用者」の定義を決めます。来館者数なのか、貸出冊数なのか、登録者のうち実際に利用した人数なのか
- 利益を目的としないため、評価軸は「予算の範囲内で、市民にどれだけ価値を届けられるか」になります
- 市民をセグメントに分け(子育て世帯、学生、就業者、高齢者など)、利用していない層がなぜ利用しないのかを考えます
- 開館時間、立地、蔵書といった供給側の制約が利用を妨げていないかを確認します
- 他の公共施設や地域の団体と連携する選択肢も、公共ならではの打ち手になります
よくあるつまずき:民間企業と同じ発想で収益化の話に寄ってしまい、公共施設としての目的との整合が取れなくなることがあります。
問10 自治体のごみリサイクル率の向上
設問:ある市が、家庭から出るごみのリサイクル率を高めたいと考えています。どのような方針で進めるべきでしょうか。
着眼点
- リサイクル率という指標の分子と分母を確認します。何をリサイクルとみなすかで打ち手が変わります
- 住民の行動は「分別のルールを知っている」「分別できる」「実際に分別する」の段階に分けて捉えると、どこで止まっているかが見えます
- 住民の属性(単身世帯、集合住宅、事業所併設など)によって課題が異なる可能性があります
- 回収・選別にかかる費用と、資源として得られる価値のバランスにも触れられると立体的になります
- 強制力のある規制と、分かりやすさや動機づけによる誘導のどちらを主とするかは、明確に示したい論点です
よくあるつまずき:住民への啓発活動だけを打ち手として挙げ、回収の仕組みや分別区分そのものを変える選択肢を検討しないまま終わってしまいがちです。
解いた後の振り返りチェックリスト
解き終えたら、次の項目を確認してください。すべてに「はい」と答えられるようになれば、その問題は仕上がったと考えてよいでしょう。
- 問題文の言葉をそのまま受け取らず、対象範囲と目標を自分の言葉で定義し直したか
- 「今回解くべき問いは何か」を、議論を始める前に一言で言えたか
- 分解の切り口を、なぜその切り口にしたのかまで説明できるか
- 置いた仮定を「仮定」として明示し、それぞれに一言の根拠を添えたか
- 計算をした場合、単位と桁が最後まで整合していたか
- 打ち手を挙げたとき、優先順位をつけるための評価軸を先に示したか
- 打ち手のデメリットやリスクに、自分から触れたか
- 最後に、論点・根拠・結論の順で30秒以内にまとめ直せたか
チェックが外れた項目があれば、その項目だけを意識して次の問題に取り組みます。一度にすべてを直そうとするより、はるかに定着が早くなります。
まとめ
ケース面接の練習で伸びるのは、解いた問題の数ではなく、振り返りの質です。今回の10問も、1問を一度ずつ解くより、3問を選んで繰り返し解き、そのたびにチェックリストで確認するほうが力になります。タイプごとに考え方の骨格が違うことを体感できれば、初めて見るお題にも落ち着いて向き合えるようになるはずです。
Strategy Talentでは、模擬面接を通じて、こうした思考プロセスへのフィードバックをご提供しています。独学での対策に手応えが持てないときは、お気軽にご相談ください。