人口減少が進む市で市立図書館の利用者数を3年で1.5倍にする
- 公共・非営利
- 難易度:基礎
- 目安 20分
あなたは、人口8万人で年1%ずつ人口が減っている市の教育委員会から相談を受けています。
市立図書館は中心部に本館が1館、郊外に分館が2館あり、年間の延べ来館者数は24万人、貸出冊数は年40万冊で、いずれも10年で2割減少しました。
市長は「3年で利用者数を1.5倍にしたい」と述べています。どのように取り組むべきか、方針を提案してください。
まず時間を計って、声に出して解いてみてください。行き詰まったらヒントを1つずつ開き、解き終えてから解説を確認します。
ヒント 1 を見る
「利用者数」が何を指すかを最初に定義しましょう。延べ来館者数、年1回以上利用した市民の数、電子書籍を含む利用など、定義によって打ち手は変わります。
ヒント 2 を見る
来館者を年代別・目的別に分解すると、伸びしろのある層が見えます。図書館を使っていない市民が「なぜ使わないか」も考えましょう。
ヒント 3 を見る
図書館の目的は貸出だけではありません。学習や交流の場としての価値を評価軸に入れると、収益では測れない成功を定義できます。
解説を表示する解答の流れ・数値例・評価のポイント・よくあるNG・発展問題
前提の確認
- 依頼主:人口8万人で年1%ずつ減っている市の教育委員会。市立図書館は本館1館と分館2館で、年間の運営費は約3億円(仮定)
- 状況:延べ来館者数は年24万人、貸出冊数は年40万冊で、いずれも10年で2割減少。減少幅は人口減少(10年で約1割)より大きく、人口以外の要因がある
- 目的の確認:市長の「利用者数を1.5倍」は数値目標であり、本来の狙いは「図書館が市民に使われ、学びと交流の場として機能すること」と確認する。ここは候補者から確認し、「利用者数」の定義を合わせて提案する
解答の流れ
1. 論点と評価軸の設定
公共の課題では、目標の数字より先に「何を成功とするか」を定義します。本問では、まず「利用者数」の定義から始めます。
- 延べ来館者数(現在24万人):分かりやすいが、同じ人が何度も来ても増える
- 年1回以上利用した市民の数(実利用者):登録者3万人のうち年1回以上の利用者は1.6万人で、人口の20%(仮定)
- 電子書籍やオンライン予約を含めた利用:来館しない利用を数えられる
これを踏まえ、評価軸を3つ置きます。
- 利用者の広がり:市民のうち年1回以上利用した人の割合(主指標)
- 利用の深さ:延べ来館者数、貸出冊数、学習席の稼働率
- 費用対効果:運営費の増加を、得られる利用の増加と比べて説明できること
論点は「使っていない市民に届く形で、図書館の役割を広げるには何をすべきか」となります。
2. 現状の分解
延べ来館者24万人を年代別に分け、人口構成と比べます(仮定)。
| 年代 | 人口 | 人口比 | 来館者数 | 来館者比 | 主な利用目的 |
|---|---|---|---|---|---|
| 高齢者(65歳以上) | 2.8万人 | 35% | 9.6万人 | 40% | 読書、新聞・雑誌 |
| 現役世代(20〜64歳) | 3.8万人 | 48% | 4.8万人 | 20% | 実用書、子どもの付き添い |
| 中高生 | 0.4万人 | 5% | 2.4万人 | 10% | 試験前の自習 |
| 小学生以下と保護者 | 1.0万人 | 12% | 7.2万人 | 30% | 絵本、読み聞かせ |
現役世代は人口の半分を占めながら来館者の2割にとどまり、最大の伸びしろです。理由として、平日の開館が18時まで(仮定)で仕事帰りに寄れないこと、電子書籍を導入していないことが考えられます。中高生は人数は少ないものの1人あたりの来館回数が多く、試験期には学習席が足りていません(仮定)。
3. 打ち手の洗い出しと評価
| 打ち手 | 利用への効果(仮定) | 費用(仮定) |
|---|---|---|
| A. 平日の開館を20時まで延長し、電子書籍を導入 | 現役世代の来館が4.8万→8万人。電子書籍の利用が年4万人分加わる | 年2,000万円 |
| B. 本館の一部を改修して学習席を倍増 | 中高生の来館が2.4万→4万人 | 一時3,000万円 |
| C. 分館で保育園と連携した読み聞かせ、高齢者向けの健康・介護情報コーナーと移動図書館 | 子どもと高齢者の来館が合計3万人増 | 年1,000万円 |
| D. 新刊の大量購入で貸出冊数を増やす | 既存の利用者の貸出は増えるが、新しい利用者は増えにくい | 年3,000万円 |
A〜Cを合わせると、延べ来館者は24万人から約32万人(1.3倍)になり、電子書籍の利用4万人分を加えた「利用」では約36万人で1.5倍に届きます。運営費の増加は年3,000万円(1割)と一時費用3,000万円です。Dは評価軸1に効かないため優先度を下げます。
4. 結論
主指標を「年1回以上利用した市民の割合」に置き、現状の20%を3年で30%に高めることを成功の定義とします。これは実利用者1.6万人を2.4万人にすることに相当し、市長の「1.5倍」を来館の延べ数ではなく市民の広がりで達成する提案です。打ち手は現役世代と中高生に集中し、開館時間の延長と電子書籍の導入から始めます。学習席の改修は、試験期の稼働率を確認してから判断します。
面接官とのやり取りの例
候補者:「最初に、市長の言う『利用者数』が何を指すかを確認させてください。延べ来館者数であれば同じ人の来館回数を増やせば達成できますが、本来の狙いは図書館を使う市民を広げることだと理解しています。」
面接官:「その通りです。市長は『市民の3人に1人が使う図書館』という言い方をしています。」
候補者:「では、主指標を年1回以上利用した市民の割合とし、現状の20%から30%を目標に置きます。次に、来館者の年代別の内訳を確認したいです。現役世代の利用が人口比より少ないのではないかと考えています。」
面接官:「現役世代は来館者の2割です。平日の閉館が18時なので、仕事帰りには来られないという声があります。」
候補者:「開館時間の延長と電子書籍の導入で、来館しなくても使える形を作ります。費用について伺いますが、運営費の増加はどの程度まで認められそうでしょうか。1割程度の増加を想定しています。」
面接官:「1割程度なら議会に説明できます。ただし、職員の増員は難しいです。」
候補者:「では、開館時間の延長は夜間の一部業務を委託や自動貸出機で補い、職員の増員なしで実施する前提で計画します。」
評価のポイント
| 観点 | 見られていること |
|---|---|
| 成功の定義 | 「利用者数」の定義を自ら置き、市民の広がりという公共の目的を主指標にしたか |
| 分解 | 来館者を年代別に分け、人口構成と比べて伸びしろの層を特定したか |
| 打ち手の選択 | 使っていない市民に届く打ち手を優先し、貸出冊数だけを追う案を退けたか |
| 実行への配慮 | 運営費と人員の制約を確認し、段階的に進める順番を示したか |
よくあるNG
- 「利用者数」の定義を確認せず、延べ来館者数を増やすイベント案を並べる
- 減少の原因を人口減少だけに求め、開館時間や電子化など供給側の要因を検討しない
- 「本を増やせば人が来る」と考え、図書館を使っていない層の理由を考えない
- 費用と人員の制約に触れず、実現できない規模の施策を提案する
発展問題
同じ市で、図書館の利用が増えた場合に、市民の学習や地域の交流にもたらす効果を、来館者数以外の指標でどのように測るべきか、考え方を示してください。
※ 本問の数値・組織はすべて説明のための架空の設定です。
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