客室40室の温泉旅館の利益改善と稼働率・単価の両立
- 売上・利益改善
- 難易度:標準
- 目安 25分
地方の温泉地にある客室40室の旅館の営業利益率が5%程度にとどまっており、オーナーは利益を3倍に増やしたいと考えています。
週末は満室に近い一方、平日の稼働率は半分以下です。オーナーは「平日を値下げして稼働率を上げるべきか」と悩んでいます。
利益の構造を分解したうえで、稼働率と単価のバランスをどう取るべきか、打ち手と優先順位を提案してください。
まず時間を計って、声に出して解いてみてください。行き詰まったらヒントを1つずつ開き、解き終えてから解説を確認します。
ヒント 1 を見る
宿泊売上は「客室数 × 稼働率 × 1室あたり人数 × 1人あたり単価」に分解できます。週末と平日で稼働率が大きく違う点に注目しましょう。
ヒント 2 を見る
値下げの是非は「1人あたりの貢献利益(単価 − 変動費)× 人数」で比較すると、稼働率が上がっても利益が増えない場合があることに気づけます。
ヒント 3 を見る
宿泊単価だけでなく、飲料や売店などの付帯売上や、稼働に連動する人件費の見直しも打ち手に含めましょう。
解説を表示する解答の流れ・数値例・評価のポイント・よくあるNG・発展問題
前提の確認
最初に、面接官と次の点をすり合わせます。
- 規模:客室40室、1室あたり平均2.5名、年間稼働率60%(仮定)。年間の宿泊人数は「40室 × 365日 × 60% × 2.5名 = 21,900人」
- 単価とコスト:1人1泊2食で18,000円、飲料・売店などの付帯売上が1人1,800円。変動費(食材・リネン・販売手数料など)は1人5,000円、固定費(人件費・修繕・光熱費など)は年3.0億円(いずれも仮定)
- 利益の現状:売上約4.3億円 − 変動費約1.1億円 − 固定費3.0億円 = 営業利益約0.2億円(利益率約5%)
- ゴール:営業利益を3倍の 0.6億円以上 に
解答の流れ
1. 論点の設定
営業利益 = 宿泊人数 × 1人あたり貢献利益(単価 + 付帯 − 変動費) − 固定費
1人あたりの貢献利益は「18,000 + 1,800 − 5,000 = 14,800円」です。固定費は短期的に動かしにくいため、論点は「貢献利益の総額をどう増やすか」、すなわち 人数(稼働率)と1人あたり貢献利益(単価)のどちらをどう動かすか に置きます。
2. 分解とボトルネックの特定
稼働率を曜日で分けると、週末(金・土・祝前日、年105日)が95%、平日(年260日)が46%と仮定でき、加重平均は約60%で整合します。
ここでオーナーの「平日値下げ」案を検証します。平日単価を15,000円に下げて稼働率が46%から60%に上がった場合、
- 現状:1日46人 × 14,800円 = 約68.1万円
- 値下げ後:1日60人 × 11,800円 = 約70.8万円
差は1日2.7万円、年間で 約0.07億円 にとどまります。稼働率が14ポイント上がっても、1人あたりの貢献利益が2割減るため効果はわずかです。一方、週末は満室に近いにもかかわらず平日と同じ単価で売っている点に、取り逃している価値があります。
3. 打ち手の洗い出しと評価
| 打ち手 | 効果の試算 | インパクト | 実現性 | スピード |
|---|---|---|---|---|
| A. 週末単価を21,000円に引き上げ(稼働95%→90%を想定) | 90人 × 17,800円 − 95人 × 14,800円 = 1日 +19.6万円、年 +0.2億円 | 大 | 高 | 高 |
| B. 付帯売上の強化(夕食時の地酒提案、売店の品揃え)で1人1,800円→3,000円 | 1,200円 × 21,900人 = 年 +0.26億円 | 大 | 高 | 中 |
| C. 平日を値下げせず、連泊プランや旅行会社・海外向け販路で稼働率46%→55% | 1日9人 × 14,800円 × 260日 = 年 +0.35億円 | 大 | 中 | 低 |
| D. 平日の一律値下げ | 年 +0.07億円 | 小 | 高 | 高 |
| E. 稼働に応じたシフトと多能工化で人件費を削減 | 年 −0.1億円 | 中 | 中 | 中 |
4. 結論
すぐに着手できる A(週末の値上げ) と B(付帯売上) で合計約0.46億円を積み上げ、販路開拓に時間のかかる C を2年目に向けて進めることで、営業利益は0.2億円から 約1億円 に届く見込みです。オーナー案の D は、単価を下げるより「平日だけの付加価値」で稼働を上げる方向に置き換えることを提案します。
面接官とのやり取りの例
候補者:週末が満室に近いということは、週末は単価を上げても客が減りにくいのではないかと考えています。曜日別の稼働率と、週末と平日の単価差はありますか。
面接官:週末は95%、平日は46%程度です。単価は曜日にかかわらず一律18,000円です。
候補者:ありがとうございます。値下げの判断をするために、1人あたりの変動費を知りたいのですが、食材や手数料を含めてどの程度でしょうか。
面接官:1人あたり5,000円程度です。予約の7割はオンライン旅行サイト経由で、手数料はそこに含まれています。
候補者:では平日の値下げは、貢献利益の減少を稼働率の上昇で補い切れない可能性があります。付帯売上について、夕食時の飲料の注文率はどの程度ですか。
面接官:3割程度です。近隣の旅館では地酒の提案で5割を超えるところもあると聞いています。
評価のポイント
| 観点 | 見られていること |
|---|---|
| 構造の分解 | 稼働率・人数・単価・変動費・固定費に分け、利益の式に落とせたか |
| トレードオフの定量化 | 値下げ案を「貢献利益 × 人数」で検証し、稼働率だけで判断しなかったか |
| 曜日別の視点 | 週末と平日で異なる打ち手が必要だと気づけたか |
| 打ち手の評価 | 評価軸を明示し、即効性のある施策と時間のかかる施策を分けて提案できたか |
よくあるNG
- 「稼働率が低いから値下げ」と短絡的に結論づけ、貢献利益の変化を試算しない
- 週末と平日を平均した稼働率で議論し、値上げ余地のある週末を見落とす
- 宿泊単価だけに注目し、付帯売上や人件費といった他の変数を検討しない
- 固定費3.0億円を「削減できる」と安易に置き、根拠のない大幅なコスト削減を前提にする
発展問題
同じ旅館で、客室の一部を改装して露天風呂付きの高単価客室(1人35,000円)に転換する 案が出ました。改装費を1室あたり2,000万円と仮定し、何室を転換すれば何年で投資を回収できるかを、稼働率の仮定を置いたうえで試算してください。
※ 本問の数値はすべて説明のための仮定です。
解いた内容、プロの目で確かめませんか。
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