地方銀行の本業収益を立て直し、営業利益を3年で1.3倍にする
- 売上・利益改善
- 難易度:応用
- 目安 30分
地方都市を地盤とし、預金と貸出を中心に営む地方銀行の頭取から相談を受けています。
「貸出の利ざやが縮み続け、本業で稼ぐ力が落ちている。3年で本業の営業利益を1.3倍にしたい」とのことです。
収益構造を分解したうえで、改善のための打ち手と優先順位を提案してください。
まず時間を計って、声に出して解いてみてください。行き詰まったらヒントを1つずつ開き、解き終えてから解説を確認します。
ヒント 1 を見る
銀行の本業の利益を「資金利益(貸出などの利息収入 − 預金などの利息費用)+ 手数料収入 − 経費」に分けると、論点が整理できます。
ヒント 2 を見る
利ざやの縮小が今後も続くなら、何もしなければ利益は減ります。目標との差を測るときは、この「放置した場合の減少分」を上乗せして考えましょう。
ヒント 3 を見る
店舗や人員のコストは削りやすい一方、地域の顧客と従業員への影響があります。収益側の打ち手とコスト側の打ち手を分けて、実現性と時間軸を比べましょう。
解説を表示する解答の流れ・数値例・評価のポイント・よくあるNG・発展問題
前提の確認
最初に、面接官と次の点をすり合わせます。
- 規模:預金残高4兆円、貸出残高 3兆円、店舗120店、従業員2,000人(仮定)
- 本業の営業利益の定義:資金利益 + 手数料収入 − 経費と置く。有価証券の売却益や貸倒れの費用(信用コスト)は本業の利益に含めず、打ち手の評価で別途考慮する
- 金利環境:今後3年は金利水準が大きく変わらないと置く。金利上昇による利ざやの回復は前提にしない
- 手段の範囲:店舗の統廃合は選択肢に含めてよいが、地域からの撤退や解雇は避けたいという頭取の意向がある
解答の流れ
1. 論点の設定
本業の営業利益 = 資金利益(貸出残高 × 利ざや)+ 手数料収入 − 経費
現状を仮定で置くと次のとおりです。
| 項目 | 金額 | 内訳の仮定 |
|---|---|---|
| 資金利益 | 240億円 | 貸出残高3兆円 × 利ざや0.8% |
| 手数料収入 | 60億円 | 送金・口座関連30億円、投資信託・保険の販売20億円、法人向けサービス10億円 |
| 経費 | 240億円 | 人件費120億円、店舗・物件費80億円、システム・その他40億円 |
| 営業利益 | 60億円 | 売上(資金利益+手数料収入)300億円の20% |
目標の1.3倍は 78億円 で、差は18億円です。ただし、利ざやは過去3年で0.1ポイント縮小しており(仮定)、今後3年でさらに 0.05ポイント縮小 すると置くと、資金利益は3兆円 × 0.05% = 15億円減少 します。したがって、実際に必要な改善額は 18億円 + 15億円 = 33億円 です。この「放置した場合の減少」を織り込むことが、本問の最初の関門です。
2. 分解とボトルネックの特定
資金利益:利ざや0.8%は、大企業向けや住宅ローンなど金利競争の激しい分野の比率が高いことが要因と見立てます。貸出3兆円のうち、地元の中小企業向けの事業性貸出は4割(1.2兆円)にとどまり(仮定)、利回りの低い大口貸出と住宅ローンが6割を占めています。
手数料収入:売上の20%にとどまり、法人向けの事業承継・M&A・経営支援といった分野の手数料が10億円と小さいことがボトルネックです。地元企業の経営者の高齢化が進む中、需要に応えられていないと見立てます。
経費:経費率(経費 ÷ 売上)は80%と高い水準です。店舗120店のうち、来店客が減って単独では赤字の店舗が30店程度あると仮定します。事務作業も店舗ごとに行われており、集中化の余地があります。
3. 打ち手の洗い出しと評価
| 打ち手 | 効果の試算(3年後) | インパクト | 実現性 | スピード |
|---|---|---|---|---|
| A. 貸出構成の見直し:大口・住宅ローンの一部3,000億円を、利回りが0.5pt高い地元中小企業向けに振り替え | 資金利益 +15億円、信用コスト増 −3億円 → +12億円 | 大 | 中(審査体制の強化が前提) | 中 |
| B. 法人向け手数料の拡大:事業承継・M&A・補助金申請支援などの専門チームを設置 | 手数料 +15億円、人件費増 −5億円 → +10億円 | 中 | 中(人材育成に時間) | 低 |
| C. 店舗網の再編:30店を近隣店と統合、または相談に特化した小型店舗に転換 | 店舗・物件費 −10億円 | 中 | 中(地域への説明が必要) | 低 |
| D. 事務の集中化とデジタル化:店舗の後方事務を本部に集約し、来店手続きをウェブへ | 人件費 −6億円(採用抑制と配置転換で吸収) | 小 | 高 | 中 |
| E. 有価証券運用の拡大 | 大きいが不確実 | — | 低(本業ではない) | — |
A〜Dの合計は 38億円 です。利ざや縮小による15億円の減少を差し引いても23億円の改善となり、3年後の営業利益は 83億円(約1.4倍) で目標に届きます。Eは本業の収益力の改善にはならず、一般に銀行の資産運用にはリスク管理上の規律が求められるとされることから、選択肢から外します。
4. 結論
初年度は、既存の取引先への提案で始められる A と、投資が小さい D に着手し、同時に C の再編計画を決めて地域への説明を始めます。B は人材の育成と採用に時間がかかるため、初年度から投資を始めて3年目に効果を出す計画とします。店舗の統合にあたっては、移動が難しい高齢の顧客のために出張相談や訪問の体制を残し、従業員は統合先の店舗や専門チームへの配置転換で対応します。利ざやの縮小が続いても、3年で営業利益を約83億円に引き上げる計画です。
面接官とのやり取りの例
候補者:目標を金額で確認させてください。営業利益60億円の1.3倍で78億円ですが、利ざやの縮小が続くなら、その減少分も埋める必要があります。過去の利ざやの推移はわかりますか。
面接官:3年前は0.9%で、現在は0.8%です。今後も縮小は続くと見ています。
候補者:では今後3年で0.05ポイント縮むと置き、15億円の減少を上乗せして33億円の改善が必要と考えます。次に貸出の構成ですが、地元の中小企業向けの割合はどの程度でしょうか。
面接官:4割程度です。残りは大企業向けと住宅ローンで、金利の競争が厳しい分野です。
候補者:利回りの高い中小企業向けに一部を振り替える余地がありそうです。ただし審査の負担が増えるので、事務の集中化で人手を捻出したいと考えています。店舗の状況はいかがですか。
面接官:120店のうち30店ほどは来店客が減っており、単独では赤字です。ただ、地域から撤退したという印象は避けたいというのが頭取の意向です。
候補者:完全な閉鎖ではなく、近隣店との統合や相談専門の小型店への転換を中心に組み立てます。もう1点、事業承継の相談は増えていますか。
面接官:経営者の高齢化で相談は増えていますが、専門の人材が少なく、外部に紹介して終わることが多いです。
評価のポイント
| 観点 | 見られていること |
|---|---|
| 目標の翻訳 | 「1.3倍」を金額に置き換え、利ざや縮小による減少分を上乗せして必要額を示せたか |
| 分解 | 資金利益・手数料・経費の3つに分け、それぞれのボトルネックを特定できたか |
| 打ち手の評価 | 収益側とコスト側の打ち手を分け、信用コストや人件費増など効果を打ち消す要素を織り込めたか |
| 前提への配慮 | 店舗再編について、地域の顧客と従業員への影響と頭取の意向を踏まえられたか |
よくあるNG
- 利ざやの縮小が続く前提を見落とし、18億円の改善で目標に届くと考える
- 「手数料を増やす」と言うだけで、どの分野の手数料をどの顧客から得るのかを特定しない
- 貸出の振り替えによる利回りの上昇だけを見て、信用コストの増加を考慮しない
- 店舗閉鎖を真っ先に提案し、地域や高齢の顧客への影響を考えない
発展問題
同じ銀行で、金利が上昇し 3年後に利ざやが0.2ポイント回復する 見込みになった場合、打ち手の優先順位はどう変わるでしょうか。預金金利の引き上げによる利息費用の増加も踏まえて資金利益の変化を試算し、店舗再編を計画どおり進めるべきかを再検討してください。
※ 本問の数値・企業はすべて説明のための架空の設定です。
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