戦略の仕事に関わりたいと考えてコンサルティングファームに入社したものの、気がつけばPMOやシステム導入のプロジェクトが続いている。そうした状況のなかで、「このままでよいのだろうか」と感じている方は少なくないのではないでしょうか。
PMOやシステム導入は、クライアントの変革を実現するうえで欠かせない仕事であり、そこで培われる力には確かな価値があります。ただ、思い描いていた仕事との距離が縮まらないまま年次が上がっていくと、焦りを覚えるのも自然なことです。
戦略の仕事に近づく道は、大きく「社内の戦略部門への異動」と「転職」の2つに分かれます。本記事では、それぞれの利点と難しさ、どちらを選ぶかを考えるための問い、両方を並行して進める場合の注意点を整理します。
※ 本記事でいう総合系・IT系ファームとは、BIG4系のコンサルティングファーム、アクセンチュア、ベイカレントなどに代表される、幅広い領域を扱うファームを指します。内容は一般的な傾向であり、異動制度の有無や運用、選考の実態は、ファームや部門、時期によって大きく異なります。
比べる前に:「戦略をやりたい」の中身を分ける
社内異動か転職かを比べる前に、「戦略をやりたい」という言葉が何を指しているのかを分けて考えておくと、その後の判断がしやすくなります。
- テーマ:全社戦略、事業戦略、新規事業、M&Aなど、扱う問いそのものを変えたい
- 関わる段階:決まったことを実現する段階ではなく、何をやるかを決める段階に関わりたい
- 働き方:少人数のチームで、広い範囲を自分で考える環境に身を置きたい
- その先のキャリア:数年後に経営企画や投資の仕事へ進むための経験を積みたい
どれを重視するかによって、社内の戦略部門で十分に満たせるのか、外に出る必要があるのかが変わってきます。
社内異動という選択肢
利点
- これまでの評価と信頼関係を引き継げる:社内での実績や人間関係が、異動先でも一定の土台になります
- 実態を事前に確認しやすい:戦略部門で働く同僚や元同僚から、案件の内容や働き方を直接聞くことができます
- 生活面の変化が小さい:雇用条件や福利厚生が大きく変わらないため、家庭の状況との両立を図りやすくなります
- 出身部門の知見が強みになりやすい:構想から実行へつなげる案件では、実行側を知っていることが評価される場面があります
難しさ
- 制度の有無と運用はファームによって異なる:社内公募や異動希望の制度が整っているファームもあれば、個別の調整に委ねられているファームもあります。制度があっても、募集の時期や枠が限られたり、上長の承認が前提になったりする場合があります
- 現部門の稼働との兼ね合い:プロジェクトの途中では抜けにくく、現部門から見れば戦力の流出にもなります。稼働が高い時期は、異動先との接点づくりや選考準備の時間も確保しにくくなります
- 異動後の評価リセット:求められるスキルが変わるため、同じ職位であっても立ち上がり期間の評価は厳しくなりやすいと言われます。ファームによっては、職位や昇進の時期が調整されることもあります
- 選考がある場合も多い:社内であっても、ケース面接などを通じて適性を確認されることがあります
- 実現しなかった場合の気まずさ:希望を伝えたうえで異動が叶わなかったとき、現部門でどう働き続けるかを考えておく必要があります
転職という選択肢
利点
- 選択肢の幅が広い:戦略ファーム、他ファームの戦略部門、FAS、事業会社の経営企画など、社内にはない選択肢まで含めて検討できます
- 自分のタイミングで動ける:社内の募集時期や枠に左右されにくくなります
- これまでの「ラベル」から離れられる:社内では「ITの人」「PMOの人」という認識が定着していても、新しい環境ではゼロから役割を築けます
- 市場での評価を知る機会になる:選考を通じて、自分の経験が外からどう見えるのかを確認できます
難しさ
- 選考準備の負荷:ケース面接の対策などを、現職の稼働と並行して進める必要があります
- 信頼関係をゼロから築く必要がある:社内で積み上げた実績は、新しい環境にはそのまま持ち込めません
- 職位や条件が変わる可能性:領域を変える転職では、職位や待遇が現職と同じにならない場合があります
- 入社後の実態を把握しにくい:「戦略」と名のつくポジションでも、実際の案件内容はさまざまです。面接の場で具体的に確認することが欠かせません
比較表
| 観点 | 社内異動 | 転職 |
|---|---|---|
| 選択肢の幅 | 自社の戦略部門に限られる | 戦略ファーム、FAS、事業会社などまで広がる |
| 時期の自由度 | 制度や募集の時期に左右されやすい | 比較的自分で決めやすい |
| 事前の情報収集 | 社内の知人から実態を聞きやすい | 面接や外部の情報が中心になる |
| 評価・信頼の継続性 | 一定程度引き継げる | ゼロから築く |
| 立ち上がり期の評価 | リセットされやすい | リセットされる |
| 生活面の変化 | 比較的小さい | 条件や環境が変わりうる |
| 準備の負荷 | 社内調整と、場合により選考対策 | 書類・面接対策を稼働と並行 |
| 実現しなかった場合 | 希望が知られた状態で現部門に残る | 現職をそのまま続けられる |
※ いずれも一般的な傾向であり、ファームや個人の状況によって異なります。
判断のための5つの問い
- 自社の戦略部門で、自分が関わりたいテーマの仕事が実際に行われているか。部門の名称ではなく、直近の案件の中身で確認します
- 異動の道筋は現実的に存在するか。制度の有無だけでなく、実際に異動した人がいるか、どのくらいの期間を要したかを調べてみてください
- 違和感の原因は「仕事の内容」か、それとも「ファームの文化や評価のあり方」か。前者であれば社内異動で解消できる可能性がありますが、後者の場合は異動しても残り続けるかもしれません
- 立ち上がり期間の評価の停滞を、どちらの環境なら受け入れやすいか。どちらを選んでも、新しい領域で成果が出るまでには時間がかかります
- いつまでに、どのような状態になっていたいか。異動の実現に要する時間と、自分の時間軸が合っているかを確かめます
両にらみで進める場合の注意点
社内異動と転職を並行して検討すること自体は、不自然なことではありません。ただし、進め方にはいくつか注意が必要です。
情報管理
- 転職を検討していることは、親しい同僚であっても社内では話さないのが基本です
- 社内異動の相談は、誰に、どの順番で伝えるかを事前に考えます。上長への報告の要否など、制度上のルールがある場合はそれに従ってください
- 業務用のPC、メール、カレンダーを転職活動に使わないようにします
- 職務経歴書や面接では、クライアント名や機密にあたる情報を出さないよう、守秘義務に十分配慮します
時期
- 社内の募集時期と転職の選考時期が重なると、判断が難しくなります。どちらの結果を先に得たいのかを決めておくと、迷いが減ります
- 内定への回答期限は、長くは待ってもらえないことが一般的です。社内異動の結果が出る時期を見込んで、応募の時期を調整することをおすすめします
- プロジェクトの区切りや評価の時期も考慮します。現職での責任を果たしたうえで動くことが、どちらの道でも信頼につながります
- 稼働が高い時期に無理に進めると、準備の質が下がります。余裕のある時期を選ぶことも大切です
「今は動かない」も対等な選択肢
検討した結果、今は動かないと決めることにも十分な意味があります。現部門のなかで構想策定に近いフェーズの案件や提案活動に手を挙げる、ケース面接の準備を少しずつ進める、半年後に改めて棚卸しをするなど、準備に充てる期間は決して遠回りではありません。大切なのは、状況に流されるのではなく、自分で選んでいるという感覚を持てることです。
まとめ
戦略の仕事に近づく道として、社内異動には信頼の継続性と情報の得やすさが、転職には選択肢の幅と時期の自由度があります。一方で、どちらを選んでも新しい領域での立ち上がりには時間がかかり、評価はいったんリセットされると考えておくのが現実的です。まずは「戦略をやりたい」の中身を言葉にし、5つの問いに照らして、ご自身にとって納得のいく道筋を考えてみてください。
Strategy Talentでは、転職を前提とせず、社内異動や現職での準備も含めてキャリアの選択肢を整理するご相談を承ります。まだ方向性が定まっていない段階でも、お気軽にお声がけください。