Case Practice

実店舗とECを併営するアパレル企業の営業利益率の改善策

  • 売上・利益改善
  • 難易度:標準
  • 目安 25分
設問

全国に30店舗を展開し、自社ECサイトも運営するカジュアル衣料のアパレル企業があります。売上は実店舗とECを合わせて伸びていますが、営業利益率は3%にとどまり、この3年間は低下傾向にあります。
営業利益率が低い要因をチャネル別に分解し、2年以内に営業利益率を6%に引き上げるための打ち手と優先順位を提案してください。

まず時間を計って、声に出して解いてみてください。行き詰まったらヒントを1つずつ開き、解き終えてから解説を確認します。

ヒント 1 を見る

営業利益は「売上 − 売上原価 − 販管費」です。店舗とECでは原価率も販管費の中身も異なるため、チャネル別に損益を分けることが出発点になります。

ヒント 2 を見る

アパレルでは、定価で売れずに値引きした分と、ECで返品された分が利益を大きく削ります。「値引き率」「返品率」「在庫回転」の3つを確認しましょう。

ヒント 3 を見る

売上を増やす打ち手より、同じ売上で利益を増やす打ち手を優先すると、2年という時間軸に合います。

解説を表示する解答の流れ・数値例・評価のポイント・よくあるNG・発展問題

前提の確認

最初に、面接官と次の点をすり合わせます。

  • 事業の規模:年商200億円。内訳は店舗120億円、EC80億円(いずれも返品を差し引いた後の金額、仮定)。営業利益は6億円で利益率3%
  • 商品の特性:春夏・秋冬の2シーズンで商品を入れ替え、シーズン末に売れ残った商品は値引きして処分する
  • ゴール:2年以内に営業利益率6%、つまり営業利益を12億円に引き上げること。売上の大幅な拡大は前提にしない

解答の流れ

1. 論点の設定

営業利益 = 売上 − 売上原価 − 販管費

営業利益率を3%から6%にするには、売上200億円のままなら 利益を6億円積み増す 必要があります。2年という時間軸では、同じ売上から漏れている利益を取り戻すことが中心になります。論点を「利益はどのチャネルの、どの要因で漏れているか」と置きます。

2. 分解とボトルネックの特定

損益をチャネル別に分けると、次の構図が見えます(仮定、単位:億円)。

項目 店舗 EC 合計
売上(返品控除後) 120 80 200
売上原価 54(45%) 40(50%) 94
粗利 66(55%) 40(50%) 106
販管費 60 40 100
営業利益 6(5%) 0(0%) 6(3%)

ECは売上の4割を占めながら利益を生んでいません。要因を掘ると、2つの漏れが見つかります。

返品率:ECの返品率は出荷額の 20%(仮定) で、店舗の3%と比べて突出しています。返品理由の7割はサイズ違いです。出荷額100億円のうち20億円が戻り、客単価1万円(仮定)なら返品は20万件。1件あたり往復送料と再検品で2,500円かかるとすれば、処理費は年5億円です。さらに返品品の一部は再販できずロスとなり、ECの原価率を押し上げています。

値引き率と在庫回転:定価に対する値引き率は店舗25%、EC30%(仮定)です。在庫回転は「売上原価94億円 ÷ 平均在庫47億円 = 年2.0回」で、シーズン末に売れ残りが多く、値引きで処分している構図です。店舗とECの在庫が別々に管理されているため、片方で余った商品をもう片方で売れず、両方のチャネルで値引きが起きています。

3. 打ち手の洗い出しと評価

打ち手 効果の試算(仮定) インパクト 実現性 スピード
A. EC返品率の低減:サイズ表記の統一、購入者の体型別レビューの表示、店舗での試着・返品受付 返品率20%→12%。処理費 −2億円、再販不能ロス −1億円で +3億円
B. 在庫の一元化と初回生産の抑制:店舗・ECの在庫を共通にし、初回生産を絞って売れ筋を追加生産 値引き率を店舗・ECとも2pt改善。単純計算で5.5億円だが、売れ残りの発生を見て +4億円
C. EC広告の効率化:獲得単価の高い広告を絞る 広告費12億円の3割を削り、失う売上の利益を差し引いて +2億円
D. 不採算店舗の閉鎖:赤字の5店を閉める +2億円。ただし従業員の配置転換とブランドの露出減を伴う

Bの試算を補足します。店舗の定価ベース売上は「120億円 ÷ 0.75 = 160億円」で、値引き率が2pt下がれば3.2億円が利益に加わります。ECは「80億円 ÷ 0.70 ≒ 114億円」で、同じく2ptなら2.3億円です。合計5.5億円のうち、一部は値引きを控えたことによる売れ残りで相殺されると見て、4億円と置きます。

4. 結論

まず即効性の高い A(EC返品率の低減)C(広告の効率化) を初年度に実施し、営業利益を6億円から11億円に引き上げます。並行して B(在庫の一元化) に着手し、翌年のシーズンから効果が出れば営業利益は15億円、利益率は7%を超えて目標を達成します。Bはシステムの統合と生産計画の見直しを伴うため、2シーズン分の時間を見込みます。Dは従業員への影響とブランドの露出減を考え、A〜Cの効果を確認したうえで判断します。

面接官とのやり取りの例

候補者:営業利益率が低い要因を、店舗とECに分けて確認したいと考えています。チャネル別の損益はわかりますか。

面接官:店舗は売上120億円で営業利益6億円、ECは売上80億円で営業利益はほぼゼロです。

候補者:ECが利益を生んでいないのですね。ECでは返品と送料が利益を圧迫しやすいと考えています。返品率と、返品の主な理由はわかりますか。

面接官:出荷額の20%が返品されています。理由の7割は、サイズが合わなかったというものです。

候補者:サイズ違いなら、商品ページの情報や試着の機会で減らせる余地がありそうです。もう1つ、値引きについて伺います。シーズン末の値引き率と、店舗とECで在庫を融通できているかを教えてください。

面接官:値引き率は店舗25%、EC30%です。在庫は店舗とECで別々に管理していて、店舗で余った商品をECで売ることはできていません。

候補者:それなら、在庫を一元化して余った在庫を売れているチャネルに回すだけでも、値引きを減らせそうです。まず返品の対策で足元の利益を確保し、在庫の一元化は次のシーズンに向けて準備する、という順序で考えます。

評価のポイント

観点 見られていること
構造の理解 営業利益をチャネル別に分け、利益を生んでいない場所を数字で示せたか
業界特有の要因 返品率・値引き率・在庫回転という、アパレルの利益を削る要因に着目できたか
効果の試算 返品率や値引き率の改善が利益にいくら効くかを、根拠とともに計算できたか
優先順位 即効性のある打ち手と時間のかかる打ち手を分け、2年の時間軸に沿って並べられたか

よくあるNG

  • 「ECを強化して売上を伸ばす」と提案し、ECが利益を生んでいない構造を見ないまま話を進める
  • 返品や値引きを「アパレルでは仕方がない」と扱い、率を下げる余地を検討しない
  • 値引き率の改善効果を定価ベースで計算せず、利益への効果を過大または過小に見積もる
  • 店舗閉鎖を真っ先に挙げ、従業員やブランドへの影響に触れない

発展問題

同じ企業で、店舗を「ECの受け取り・試着・返品の拠点」と位置づけ直す 案が出ました。店舗単体の売上ではなく、EC返品率の低減や来店増という効果まで含めて店舗の価値を測る場合、赤字店舗を残すか閉めるかの判断基準をどう変えるべきか、整理してください。

※ 本問の数値はすべて説明のための仮定です。

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